オリエント考古美術
株式会社 太陽
〒 104-0031 東京都中央区京橋 2-11-9
TEL. 03-5524-6066 FAX. 03-5524-6077
e-mail

 
ギャラリーへ戻る インダス文明 メソポタミア エジプト ギリシャ・ローマ インド・ガンダーラ バクトリア イラン 中央アジア 古代ガラス

中央アジアの美術



東西文明を結んでいたシルクロードの途中に位置したソグディアナ(中央アジア、サマルカンドを含むザラフシャン川流域)は、紀元5世紀から貿易の中心となりました。国自体も農業や町作りが最盛期を迎え、ソグド人は頻繁にシルクロードを往来するようになりました。美術も栄え、ソグド人の伝説や宮廷の宴会などを物語るペンジケント(タジキスタン)の壁画が描かれたのはその頃でした。シルクロードを往来していた人々も彼らの日用品も作家のインスピレーションでした。中国で「胡」と称されたソグド人は、美術において尖った帽子をかぶった口髭と顎鬚の濃く鼻の高いイメージが固定しました。胡人と駱駝を表す加彩粘土の塑像や織物、旅人が使っていた皮袋を模した陶器などがシルクロードへの憧れを反映しています。
6世紀から8世紀にかけてソグディアナはいくつかの強力な侵略者の支配下になりながらも独自の文化を失うことなく、むしろソグド人の作り出した作品から彼らの美意識が中央アジアで広まったといわれています。
6世紀前半にフン族に征服されたましが、フン族が持ち込んだ多量の銀はかえって経済的な成長につながり、ソグド人の商業の地域も広まったそうです。
リュートン
ソグディアナ、7−8世紀、陶器、高さ:32 cm

6世紀後半からトルコ系民族が流れ込み、7世紀の後半に中国からも侵略を受けました。8世紀前半から中央アジアで始まったアラブの侵攻にも係わらずソグディアナは独特の文化を保ち抜き、イスラム化は8世紀の後半に入ってから始まりました。
ソグド人が乗っている駱駝、中国、唐時代

シルクロードの名は中国から西へ運ばれていた絹に由来します。中国の「史記」によれば、紀元前2世紀に長距離の貿易を促したのは、中国が遊牧民の攻撃を止めるため味方を作ろうと思い絹の贈り物を派遣団に持たせた事でした。西へ領土を広げた中国は侵略軍の給料などを絹で支払っていたため多量の絹が流れました。

絹の織物、中央アジア、6世紀
絹に対する強い憧れのため、中国製以外にも絹の織物が作られるようになりました。最も有名なのはササン朝ペルシャとソグディアナの生地です。
ササン朝の織物のデザインは幾何学文様や植物と動物のモティーフの組み合わせでした。ササンとソグドのデザインといえば、連珠文が代表的です。直線と円形に並べられたドットの連珠文やハートの組み合わせからなるローゼット、四葉、菱形などの模様が王冠や装身具の飾りに由来すると言われています。鳥のモティーフは鴨、孔雀、鶏、鷲などで、動物は鹿、猪や有翼の羊と馬と空想動物のセンムルヴなどです。
デザインに用いられた殆どの動物はイランの伝説に登場し、別々に考えられないほど密接だった宗教と王権を象徴する存在でした。但し、ササン朝の伝統の影響受けたソグドでは、織物や器などのデザインに連珠文と空想動物などを用いても、同じ図像が斬新で躍動感あふれるデザインに生まれ変わりました。
かつてソグディアナと文化的一体を成していたアフガニスタンの北部から8世紀頃のものと思われる素焼きの壷が出土しており、その形やデザインは豊かな想像力に基づいたものです。形は多様で、器全体が鳥や民族衣装を纏った男性をかたどるものもあれば、胴体は一般の壷で注ぎ口は動物や鳥や人間の頭部をかたどるものも、全く普通の壷の形をしたものもあります。壷の胴体に描かれた動物は様式化されており、その首から靡くリボンはパルティア時代(紀元前250年頃〜紀元224年)から拝火教の神々から王権を授かる王のイメージで王冠についていたリボンに由来していると思われます。左上の写真の壷のように胴体が大胆に形成され、流麗な曲線で描かれた幾何学文様が装飾性を極めるものもあります。この壷類の装飾には連珠文が使われています。
ソグド人は連珠文をふんだんに使って広く普及させたと思われています。織物と同様に連なる真珠は円形や直線でソグディアナのペンジケントの壁画や土器や骨壷などの模様を区切ったり、装飾として用いられたりします。
* * *
中央アジアのもう一つのイメージは、ユーラシアの草原に生まれたアニマル・スタイル(Animal Style)、つまり遊牧民が身近な動物を主題にして作った金や青銅などの美術品です。題材となる動物も表現の様式も地域によって異なっていました。草原に住む民族の生活は動物と密接に結びついており、遊牧民は飼い慣らして家畜にした羊、山羊、牛、馬や駱駝を、また狩猟民族は狩した鹿、豹、熊、狼、鳥や魚を表していました。その作品のなかには動物が闘う場面もありますが、それは部族の間の争いを象徴しているとも考えられています。また隠し絵のように何匹の動物を組み合わせて別の一匹を表現する例も見られます。
この装飾は薄い金の板から作られた鹿をかたどったものです。前脚と後脚が重なり合い、動物が横たわっている様子を表しています。特に角は力強い曲線や細かい線刻模様ですが、全体的に様式化されている一方、動物の愛らしさを引きたてる表現で優美な姿です。
鹿形の装飾
中央アジア、紀元前2世紀、金、7.8 x 7.8 cm

ギャラリーのトップページ