オリエント考古美術
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インドとガンダーラの美術


古代インドの初期仏教美術の主な様式が三つの中心地に生まれ、その地名から名を取っています。それはインド南方東海岸に位置するアマラヴァティの石灰岩製のレリーフ、北部のマトゥーラの赤色砂岩製の彫刻と、現在のパキスタンからアフガニスタンに跨るガンダーラ地方の片岩製の美術品です。
紀元前4世紀末にアレキサンダー大王のバクトリアの征服後西洋の文化が流れ込んだガンダーラには、それまで仏足石やターバンや王座の座布団などの象徴でしか表されることがなかった仏陀が人物として表されるようになりました。仏陀や菩薩の立像と坐像が多く作られました。彫刻の主な材料は片岩でしたが、時代が最盛期を過ぎますとより簡単な技法である塑像の割合が増しました。
一方、紀元1世紀中頃、アーリア系の言葉を話す中央アジアの騎馬民族であったクシャン族はバクトリアを征服し、グレコ・バクトリアという王国を作って、そこに住み着いてから更にインドへの進出を続けながら領土を広げ巨大な国を築きました。クシャン朝の国が頂点に達したのは、下の写真の金貨を造幣したカニシュカ1世(在位:紀元127-140年)支配下で、首都は現在のパキスタンのペシャワルに設置し、時季的に使っていた首都はアフガニスタンのカピサ(現在:ベグラム)とパキスタンのタキシラとインドのマトゥーラに設けました。
ハリティとパンチカを表す化粧皿
ガンダーラ出土、紀元3世紀、片岩、高さ: 10.5 cm、幅:11 cm
来歴:フランスのコレクション
カニシュカ王は、仏教の後援者でしたが、クシャン族は拝火教の伝統に由来していましたので、クシャン朝の影響としてガンダーラ美術に導入されたのは拝火教の神々や焔肩などのモティーフです。一方、インドまで広い領土で、ガンダーラの図像にヒンドゥ教の影響も生じました。
上の写真の化粧皿はイランの文化とインドの文化の要素が如何に一つのガンダーラの作品の中に融合されているかの例です。化粧皿の上半分に表されたのは、豊穣多産の神のカップル、ハリティとパンチカです。イランでは豊穣多産の女神はアルドクショと言い、片手に長い棕櫚の葉ともう一つの手に小さな花を持って座す姿が一般的です。アルドクショの台座の左右にライオンがいます。この特徴はこちらのハリティ像にも見られます。しかし、このハリティの頭の左右にいる鼻を高く伸ばした象は、インドの幸福の女神スリ・ラクッシュミの頭の上に水を灌ぐインドのモチーフですし、ハリティの大きなイヤリングもむしろインドの装身具を思わせます。
一方パンチカも、イラン系のクシャーン族のようにブーツを履いていますし、左手に槍を持っていますが、その槍の先端を飾るのはライオンの姿、またおへそが見える大きな裸のお腹はインドの財宝の神クベラ譲りです。左手は破損していますから分かりませんが、クベラのように長いお財布を持っていた可能性があります。彼の頭飾りも豪華なインド風のものです。
化粧皿と称するものは化粧用具ではなかったと言う説もあります。この化粧皿にかつて金箔が貼られており、その残りがまだ表面に見られます。

クシャン朝 カニシュカ1世 2世紀、金1スタテール

表:左手に三叉の戟を持ち、右手を拝火壇にかざす、焔肩のカニシュカ立像
碑文:PAONANO PAO KANHPKI KOPANO 「諸王の王、クシャン族、カニシュカの」

裏:四臂のシヴァ神立像
碑文:OHPO「ウェーショー」

仏教を広めるために仏陀の生涯を物語る仏伝図が制作され、礼拝者がお参りする仏塔などを飾っていました。仏教の伝えによれば、仏陀の入滅後に舎利分配が行われ、遺骨を拝むのに10の仏塔が建てられました。そして3世紀に仏教を保護宣布したアショーカ王(紀元前304–232年)は、最初の仏塔の仏舎利を更に細分し、国中に84,000の仏塔の建設を命じたと伝えられています。

礼拝者が寺院や仏塔を訪ねる際奉納していたものの一つは花でした。左の写真のフックは、木の枝から花切り落としたり、池に生える蓮を切り取ったりするのに使われていました。木製の握手に取り付けられて使用されたと思われています。
類例はジョン・マーシャルのタキシラ遺跡の発掘記録に手術用医療器具として記されたが、マーシャル自身をはじめ後世の学者はその解釈に納得が行かず、先ず医療器具の説が否定され、後に他国の仏教の儀式用具と比較が行われた結果、最終的に花の摘み取り具であることが判明しました。
花の摘み取り具
ガンダーラ、紀元3世紀、青銅、長さ: 16.7 cm
仏教美術はガンダーラから伝播して行き、北伝仏教として中央アジア、中国、朝鮮を経てシルクロードで日本に伝わりました。ガンダーラのレリーフに登場する上記のヴァジュラパーニは金剛神、ハリティは鬼子母神、パンチカは毘沙門天として日本の仏教で祭られています。
欄楯の一部:蓮華紋様、マトゥーラ出土、紀元3世紀、赤色砂岩、高さ: 21 cm、幅: 20.5 cm



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