株式会社 太陽

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装身具
スキタイ、紀元前4世紀頃、青銅、長さ 8 cm

スキタイは紀元前9世紀から紀元前4世紀までを中心にユーラシアの草原を移動していた遊牧民でした。最盛期に彼らの文化的影響が、西はカルパティア山脈から東は黄河のオルドス文化とシベリア南部にまで及んでいました。紀元前2世紀に生じた中央アジアの騎馬民族同士の争いが諸騎馬民族の移動の引き金となり、その結果押し出されたスキタイは紀元前2世紀から紀元4世紀にかけてソグディアーナ・バクトリア・ガンダーラ・カシミールなど南アジアの北西部と中央部に流れ込みました。紀元前1世紀にガンダーラとインダス川流域にインドスキタイ王国が設立され、後にインドの北西部を征服しながら領土を広めました。紀元1世紀の初頭に騎馬民族の一つであった月氏が築いたクシャン朝の支配に入りました。
社会は氏族から成り狩猟や飼育が生活基盤にあったスキタイは、身近にいる動物に象徴的な意味を持たせたり、信仰の対象として崇拝したりしていました。動物は美術の題材に用いられ動物意匠と称する、ユーラシアの草原地帯の広い地域に及ぶ様式が生まれ、動物のモチーフを中心とする青銅や金製の装飾品が作られていました。動物たちは氏族の象徴であったか、それとも鹿や馬の速足、猪の突進攻撃の勢い、狼やピューマの牙と爪、猛禽の迅速な捕食などそれぞれの特徴への憧れや敬愛の表現であるかは観賞する側の想像次第です。
こちらは、横たわる雄鹿をかたどった衣類の留め具かあるいは馬具の飾りに使われていたものです。動物は、隠し絵を思わせる様式化された描写で、特に枝角が蜷局を巻いた蛇が並べられているのようです。顔の先端もむしろ鳥の嘴に似ています。雄鹿の胴体の優美な曲線と脚の細い直線の対照が簡素な美の表現を生み出しています。
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